「書籍紹介」カテゴリーアーカイブ

改訂増補 南極読本

 平成25年(2013)に初版、26年に重版が出版された「南極読本」の改訂増補版が出版された。旧版の章立て解説頁を大幅に改訂するとともに、新たに記述された「観測トピックス」が組み入れられた、南極自然を解説した各章、コラムの記述、資料は旧版に読者から寄せられた要望、意見を参考に修正、補足が加えれられている、また、最近の南極大気科学の中心課題となっている「大気エアロゾル」の章が新たに加えられている。

 改訂増補版で特記すべきは旧版にあったQ/A形式の「南極セミナー」を削除し、「観測トピックス」に換えたことである。「南極読本」は基本的には南極自然の解説(章立て)で構成されており、幅広い読者層を想定し、南極観測における個々の研究成果の詳述は避けている。南極観測60周年記念企画として、わが国南極観測が研究分野毎の共同観測から成り立っていることに鑑み、主な共同観測・研究成果の紹介を目的に、当初は独立した出版物を企画したが、諸般の事情によりその実現が困難なため、本改訂増補版に組み入れられている。その結果、本書の書名は旧版を踏襲しているが、内容は新規の出版に近いものになっている。

(渡辺興亜,会報39号)

南極点―夢に挑み続けた男 村山雅美―

南極関係では物珍しい本が出版された。『南極点―夢に挑み続けた男 村山雅美―』という関屋敏隆氏の絵本である。関屋氏は、南極OB会会友であり、南極倶楽部の会員である。関屋氏は長年南極行きを希望され応募を続けた。関屋氏は京都の大学で美術を学ばれ、絵本やイラストレーションを通して沢山の本を出版された。そして、国内外で有名な賞をあまた得られている。最近では探検家をテーマとした『やまとゆきはら 白瀬南極探検隊』や『まぼろしのデレン 間宮林蔵の北方探検』『北加伊道 松浦武四郎もエゾ地探検』など著している。ここで紹介する『南極点―夢に挑みつづけた男 村山雅美―』は、南極の景色や生活、観測状況はもとより、南極観測隊の1次隊から9次隊までの観測の活躍を追い、9次隊の南極観測旅行に焦点が絞られるように描かれている。もちろん、微に入り細にいるところは読者の想像を駆り立てるように素晴らしい絵が挿入される。オーロラやどこまでも広がる雪原などの絵は迫力があり、夢を広げるのに十分である。子供たちがこの絵本を通して、南極への理解やあこがれを持ち、次の時代を切り開いていくためのあこがれや思いにつながってくれることを作者は願っており、紹介者も願って止まない。

(福谷 博,会報36号)

犬ぞり探検家が見た! ふしぎな北極のせかい

著者の山崎哲秀氏は高校時代に冒険家の植村直己にあこがれ、20歳の時には彼の足跡を辿るようにアマゾン川のイカダ下りを成功させた。続いてグリーンランド縦断を夢見て北極に渡るが、想像を超える北極の自然に手も足も出ずに失敗した。その後、北極を知るためにイヌイットに弟子入りし、30歳の時に始めた犬ぞりを使った活動が、北極の自然や歴史、暮らしを紹介する本書に繋がっている。

「小学生の子どもたちでも楽しめる北極の本を書いてみたいと常々思っていた」という著者の強い思いが形となった豊富な写真とイラストを使い、平易な言葉で書かれた内容は子どもたちだけではなく、大人でも十分に楽しめる。

1章の「北極と南極の違い」から9章の「北極の歴史と昔の暮らし」まで、独立した章立てで、好きなところから読める構成になっている。いずれの章も筆者の30年に渡る北極での実体験に基づいたもので、読者が持つ素朴な疑問に答える形で書かれた内容は北極のイメージを広げてくれる。各ページの下部に書かれた「質問と答え」はクイズ好きな子どもたちには嬉しいアイデアで、北極への興味がより深まることだろう。

巻末の「犬ぞり探検家のこと」では北極での活動に対するモチベーションが語られ、さらに著者の良き理解者である伴侶との南極での劇的な出会いから結婚に至るまでのくだりは、著者の人となりが良く表れていて微笑ましい。

年齢を問わず、北極に興味のある多くの人に一読を進めたい。

(小林正幸,会報36号)

南極大陸大紀行

南極OB会では「南極観測60周年記念事業」の一環として、「南極大陸大紀行」を出版した。講話会では本書の内容とともに、60年間にわたる我が国南極観測隊の内陸探査の歴史を紹介する。

我が国南極観測隊は第1次隊によるポツンヌーテン・ヌナタークの探査を嚆矢とし、3次隊による「幻のANARE山脈探査」、4次隊による1937年山脈(やまと山脈)探査、5次隊による内陸3000米高地への進出と続き、「宗谷時代」の探検的内陸探査は、南極観測再開後、8次隊の輸送支援、9次隊による「昭和基地-南極点往復トラバース」の成功によって、「内陸探検」としての一つの時代を劃した。

10次隊以降の内陸探査は、5〜7年の長期内陸観測計画として行われた。当時の内陸調査旅行は夏季の3ヶ月間、大小雪上車3〜5台による2〜3000kmの内陸トラバースとして行われた。1970年代の「エンダービーランド計画、1980年代の「東ドローニングモードランド計画」はまだ内陸探査(探検)の要素が大きく、氷床の「質量収支観測」とともに「みずほ高原」の地形、気候、基盤地形観測が主要な目的であった。これらの観測成果は「エンダービーランド〜東ドローニングモードランド地域の雪氷学図(フォリオ・シリーズ)」として国立極地研究所から刊行されている。

この間、国際雪氷観測計画の一環としての「等高線トラバース計画」、「南極氷床浅層掘削計画」なども行われ、みずほ高原からセールロンダーネ山地におよぶ広域の自然解明が進んだ。

1990年以降は「みずほ高原」の源流域(ドーム頂上域)の探査、内陸基地建設が行われ、その成果のもとに、「ドームふじ深層掘削計画」が実施され、2500m深雪氷層掘削に成功した。

2000年代にはスウェーデン隊との共同でドローニングモードランドの高地域のトラバースが行われた。

記念出版「南極大陸大紀行」には我が国南極観測60年間に行われた主要内陸トラバースの紀行、観測の概要が当事者らによって報告されている。

(渡辺興亜,会報33号)

写真集 南極

本書は絶版となっております。


我が国の南極観測隊が探検隊といわれた初期の頃から、五十年を数えます。この間、昭和基地は飛躍的に発展し、世界に誇れる多大な成果も上げてきました。一方この間、南極観測隊によって集められた写真も膨大なものとなりました。(財)日本極地研究振興会は、これらの写真資料を南極観測隊とともにカレンダーに仕上げてきました。南極観測五十周年を機に、このカレンダーを含め、他の多くの写真資料の中から厳選して編んだものがこの写真集です。掲載した写真は、120枚を超えます。なつかしい写真も多く含まれています。どうぞこの写真集を座右に置いてください。

北極読本

これまでにない視点から北極域を総観。南極とはどう違うのか、探検の歴史から北極の温暖化、北極航路の現状、そして北極域に住む人々の営みに至るまで、北極の専門家がビジュアルに解説。南極読本と合わせて、地球の極域の理解を深める一冊。

南極観測船「宗谷」航海記―航海・機関・輸送の実録

「宗谷」乗組員、観測隊員が初めて共同執筆。「宗谷」航海士、飛行士による第1〜7次隊のオペレーション全記録;船上業務、船内生活、観測隊の活動、砕氷航海の様子、オビ号、バードン・アイランド号による救出、タロ・ジロのエピソードを当事者が紹介。2015年度住田正一海事史奨励賞受賞。

南極読本 隊員が語る寒冷自然と観測の日々

本書は絶版となっております。「改訂増補 南極読本」をお買い求めください。


日本南極観測隊の活動成果を分かりやすく解説するために、南極OB会メンバーによって執筆・編集された南極の本が「南極読本」と題して出版された。

従来の南極本と違うところは、単に南極観測の科学的側面だけではなく、南極観測を理解するためには欠かせない設営や輸送、昭和基地での生活、南極条約のことや環境保全のことなど、広く南極全般について解説されているところにある。執筆にあたっては、専門に偏することなくできるだけ平易に、図や写真を沢山使って解説され、誰にでも理解できるようにと努力がされているのが嬉しい。

本書は17章に亘る「解説」と各章の解説を掘り下げ、重要事項の理解を助けるためのQ&A形式の「南極セミナー」、及び科学と設営、歴史に分けて収集され、各分野の全体像を「キーワード」を用いて提示されている「知識の体系:キーワーズ表」の三部から構成されている。章立てに含むことができなかった大事な事項については、解説の合間に挿入された14篇のコラムが補っている。

本書は南極に関心を持つ一般の人々への優れた啓蒙書であると同時に、時々「南極の話」をせがまれる我々OBにとっても、南極に関する最新の情報を広く一通りお浚いすることができるという点で、大変便利な本にもなっている。一読をお勧めしたい。

(山田知充, 会報29号)

白い沙漠と緑の山河―南極!!極寒のサバイバルを支えた酒と食

著者の古山勝康氏は第29次越冬隊員としてあすか基地で調理・設営を担当した。本書は調理担当として、酒・食を通して南極を思考した書である。南極の調理、設営に従事する中で、いつも日本を思い浮かべ、日本に帰るとまた南極に思いを馳せる。冷たい岩がむき出しの南極の山と、緑の山河をたたえる日本の山は不思議に調和がとれている。酒がそのギャップを埋めているのだ。古山氏は南極でのサバイバルにも強い関心を持っていた。「地を這うように、舐めるように吹きつづける白い雪烟には“死の匂い”がする。チロチロチロと不気味な爬虫類の舌を思わせる」は紹介者の私には強烈な印象だった。古山氏は南極の氷雪の美しさの裏に潜む恐ろしさをこう表現した。第29次隊のあすか隊のクレバス転落事故は日本の南極観測史上、最も悲惨な事故の一つであった。その時も、なかなか到着しない「しらせ」からのヘリコプターを待ちわびる悪夢のような事故現場待機の日々に飲む酒は、これまでになかった苦い酒だった。こよなく酒を愛し、南極を愛した古山氏の本書は南極人に一読をお勧めしたい一冊である。

(神田啓史,会報21号)

野村直吉船長航海記―南極探検船「開南丸」

白瀬南極探検隊「開南丸」野村直吉船長の航海日誌と挿絵を公開。南極OB会が航海技術の解説、自然資料等を加えて編集。白瀬南極探検隊の南極大陸到達にこの人あり。公式記録「南極記」とは別の視点からの白瀬南極探検隊記録。2012年度海運集会所特別賞受賞。