南極関係では物珍しい本が出版された。『南極点―夢に挑み続けた男 村山雅美―』という関屋敏隆氏の絵本である。関屋氏は、南極OB会会友であり、南極倶楽部の会員である。関屋氏は長年南極行きを希望され応募を続けた。関屋氏は京都の大学で美術を学ばれ、絵本やイラストレーションを通して沢山の本を出版された。そして、国内外で有名な賞をあまた得られている。最近では探検家をテーマとした『やまとゆきはら 白瀬南極探検隊』や『まぼろしのデレン 間宮林蔵の北方探検』『北加伊道 松浦武四郎もエゾ地探検』など著している。ここで紹介する『南極点―夢に挑みつづけた男 村山雅美―』は、南極の景色や生活、観測状況はもとより、南極観測隊の1次隊から9次隊までの観測の活躍を追い、9次隊の南極観測旅行に焦点が絞られるように描かれている。もちろん、微に入り細にいるところは読者の想像を駆り立てるように素晴らしい絵が挿入される。オーロラやどこまでも広がる雪原などの絵は迫力があり、夢を広げるのに十分である。子供たちがこの絵本を通して、南極への理解やあこがれを持ち、次の時代を切り開いていくためのあこがれや思いにつながってくれることを作者は願っており、紹介者も願って止まない。
(福谷 博,会報36号)