南極大陸大紀行

南極OB会では「南極観測60周年記念事業」の一環として、「南極大陸大紀行」を出版した。講話会では本書の内容とともに、60年間にわたる我が国南極観測隊の内陸探査の歴史を紹介する。

我が国南極観測隊は第1次隊によるポツンヌーテン・ヌナタークの探査を嚆矢とし、3次隊による「幻のANARE山脈探査」、4次隊による1937年山脈(やまと山脈)探査、5次隊による内陸3000米高地への進出と続き、「宗谷時代」の探検的内陸探査は、南極観測再開後、8次隊の輸送支援、9次隊による「昭和基地-南極点往復トラバース」の成功によって、「内陸探検」としての一つの時代を劃した。

10次隊以降の内陸探査は、5〜7年の長期内陸観測計画として行われた。当時の内陸調査旅行は夏季の3ヶ月間、大小雪上車3〜5台による2〜3000kmの内陸トラバースとして行われた。1970年代の「エンダービーランド計画、1980年代の「東ドローニングモードランド計画」はまだ内陸探査(探検)の要素が大きく、氷床の「質量収支観測」とともに「みずほ高原」の地形、気候、基盤地形観測が主要な目的であった。これらの観測成果は「エンダービーランド〜東ドローニングモードランド地域の雪氷学図(フォリオ・シリーズ)」として国立極地研究所から刊行されている。

この間、国際雪氷観測計画の一環としての「等高線トラバース計画」、「南極氷床浅層掘削計画」なども行われ、みずほ高原からセールロンダーネ山地におよぶ広域の自然解明が進んだ。

1990年以降は「みずほ高原」の源流域(ドーム頂上域)の探査、内陸基地建設が行われ、その成果のもとに、「ドームふじ深層掘削計画」が実施され、2500m深雪氷層掘削に成功した。

2000年代にはスウェーデン隊との共同でドローニングモードランドの高地域のトラバースが行われた。

記念出版「南極大陸大紀行」には我が国南極観測60年間に行われた主要内陸トラバースの紀行、観測の概要が当事者らによって報告されている。

(渡辺興亜,会報33号)